生きた土 死んだ土
酒会壺を囲んで
汝官窯への想い
三千年目の再会
中国北方の旅
韓国 慶北 間慶窯にて作陶
そこに座れ
上林湖、景徳鎮の旅
中国江南の旅
宜興 丁蜀鎮
デビットコレクション
青磁の魅力を探る
和様と唐様
初代川瀬竹春
高麗青磁素文蓮花形碗
淡交会講演原稿抜粋
安宅コレクション
テストピースの制作
亡き弟からのメッセージ
魅せられた青磁と自作
奥深き中国陶磁の魅力
もし、出会っていなかったら
外焔
これからの茶道具
雨過天青
雨過天青
  我が友に、手段こそ違うが美を求め、追求し、それを表現しようとする仲間がいる。この友と語らい、互いの美意識を交換すると、自分の作陶にとって直接的でない故か、大いに刺激となり発奮することがある。
このような友を呼び、語り合う時、そのもてなしとして、肩を張って独りよがりなお茶事のまねごとでもと試みてみるが、やはり、これでは物足りぬ。心行くまで語り尽くそうと思うとき、いつもすることがある。
自作の酒会壷に日本酒を張り、真ん中に据えて、柄杓を掛け、やはり自作のぐい呑みを並べて友を待つ。その昔、酒会壷はこのように使ったものなのか、“酒会壷”とは誰がつけたか、よく言った名だと感じる。徳利に一合、二合と入れて往復する手間も省け好都合である。偶然か、我が友はほとんど冷や酒好みときている。そのぐい呑みは、すべてテストピースの色見。気軽に作意もなく作った、色見の不用なものが我が家には数多くある。この中から面白そうなものを取り置き、このような時に使う。今回は、楽しみで作ってみた色見を並べてみました。興に乗ってくると、柄杓でぐい呑みに酌む手もおぼつかなくなって、どちらからともなく大きなぐい呑みの所望となり、益々話が弾み宴は尽きようともせず、誠にもって楽しい。
酒さえあればこと足りる我等若者もやはり少々の肴も欲しい。よく通う近所の鮨屋「鮨好」で、このおやじ自慢の“おおとろのたたき”。それも脂がのりすぎたインド鮪の鎌下のところを、沢庵と浅葱を加えた“たたき”。トロのピンク、沢庵の黄、浅葱の緑が青磁の器に彩りもよく、また、冷や酒にこの上ない肴である。
“官窯青磁”それも、あの幽玄蒼古な美しさを持った汝官窯の鉢や皿は、如何にして使われたのであろうか。思うに、遠路より貢がれた山海の珍味をその皿に盛り、絵を論じ、詩を評した、微宋皇帝の食卓模様。その時の有様を想像すると、頭の中に自分が求めようとする、馥郁たる芸術的香気の満ちた世界が浮んでくる。
青磁、それも宋時代の官窯青磁の魅力にひかれ、ひたすら追い求め、そこに自分を主張する時、官窯青磁の持つ技術の粋を尽くし、しかも、幽玄で、気品のある美しい“品格”と、自分の発想によるくだらない造形の対比。いかにしてその“品格”を崩さずして、自分の造形を表現するかである。我々作陶家に与えられた、他の工芸にない特性、それは土には可塑性があることである。これを追求することが、作陶を志す者の進むべき道であると思う。しかし、あまりにこれを強調しすぎると“品格”を失う。この闘いが今の私の仕事である。
(炎芸術―5 器に盛る 5 阿部出版 1984.1.1 に寄稿)