生きた土 死んだ土
酒会壺を囲んで
汝官窯への想い
三千年目の再会
中国北方の旅
韓国 慶北 間慶窯にて作陶
そこに座れ
上林湖、景徳鎮の旅
中国江南の旅
宜興 丁蜀鎮
デビットコレクション
青磁の魅力を探る
和様と唐様
初代川瀬竹春
高麗青磁素文蓮花形碗
淡交会講演原稿抜粋
安宅コレクション
テストピースの制作
亡き弟からのメッセージ
魅せられた青磁と自作
奥深き中国陶磁の魅力
もし、出会っていなかったら
外焔
これからの茶道具
雨過天青
雨過天青
  私がこの世界に入って、中国陶磁の魅力に関心を持ちはじめたころ、ちょうど、安宅コレクションの展覧会が始まり、一般に公開されるようになった。以後、大阪の中ノ島に、東洋陶磁美術館として開館するまで、ほぼ毎年催されていたように思う。 その頃、私は青磁の勉強をするために、台北の故宮博物院へ、よく通っていた。汝官窯、南宋官窯、の魅力に浸るためには、そこが一番相応しかった(ロンドンのデビットコレクションは遠かった)。 それが、国内で、見ることが出来る様になったのだ。その上、哥窯、耀州窯、龍泉窯も見せてもらえる。そして、何より、凄いことは、それぞれのタイプのもっとも優れたランクのものをコレクションされているのだ。この展覧会には、毎回のように通わせていただいていた。今、その当時のだいぶ縁が擦れてしまった、表紙の用紙に共通性がある図録を拝見しながら、安宅コレクションの気品の高さと、コレクターの収集姿勢のひとつである「宮廷好み」をつくづくと感じる。 おりしも、昨年暮より、台北の故宮博物院では、【大観展】が開催され、焼物は汝官窯の特別展となっている。そして、その中に安宅コレクションの「初期高麗青磁」が、出品されている。 以前より、汝官窯と初期高麗青磁の関係には、深く関心があったが、(注:陶説629号44ページ) 今回、ましく、数十センチも離れていない間隔で、何の隔てもなく並んでいる。このような陳列方法は、今までかつて、なかったのではなかろうか。画期的だし、関係者の並々ならぬ英断を感じ、個人的にも、嬉しかった。 学術的には汝官窯の方が先行するものであるが、たまたま、今回、故宮博物院へ、ご一緒した、焼物好きの方々や、偶然、会場でお会いした古美術商に、それとなく「どちらが好きですか?」と尋ねてみた・・・・。(結果は、4対1であった) 両窯の制作された時期には、数年から20年の間隔があると聞いているが、距離は何千キロと離れている。 なのに、どうして、あのように近いのであろうか!そして、あのように迫っているのであろうか?いや、魅力的である。凌いでいるように思えるところもある。北宋の神宗・哲宗・徽宗の時代が両国関係の最盛期であり、宋朝が回賜として、高麗へ汝官窯の作品が贈られていたであろうことを、想像するのに充分である。(高麗伝世・汝官窯の作品が、きっと近い将来、見つかると、思っている) 中国でも、南宋に遷って、再興を試みているが、沈静的貴族性には、高麗青磁ほど、迫ってはいないようだ。 中国陶磁の魅力に憧れ、作陶を志すものにとって、このことは、不思議だし、制作する意欲を与えてくれた。 この、初期高麗青磁の、底知れない魅力的な凄さを、教えてくれたのが、安宅コレクションである。 あの、自然の光が入る宋時代のお部屋に入らせていただき、魅力に浸れる嬉しさと、憧れの偉大さを感じ、再度、高麗のお部屋へ回って、自身への作陶意欲を頂いてくることにしている。   

(2007年3月2日 日本陶磁協会「陶説」へ寄稿 )