1、古典に学ぶ
我が家の家風は、
憧れる古典に学ぶことから発していた。
祖父より与えられた砧青磁
貴公子のような南宋官窯
慈悲深き女神のような汝官窯
唐三彩、隋白磁、六朝の響銅へ
そして、戦国のシャープな切れ味
まさに、巧技を超えた龍山の作行き
思えば、沢山の師に、教えを仰いだ。
2、独自の、造形へ
師は、何を師としたのであろう
庭に咲く花
花を受ける葉
枝に生る実
海を泳ぐ魚
天空を揺らぐ光
自らの憧れに、悩む想いでもあった。
3、一 碗
昨秋、正式に展覧会の御依頼を頂き、制作を始めるが、新たなる出品は
「ただ、一碗に託す!」と、決意した。
その折々の、自らの意いを、素直に感じ、「かたち」とするが
徐々なる気持ちの変化とともに、「碗の膨らみ」が変わっていく。
ところが、ある時から、もう、意いが進まなくなってしまった。
全てが、同じ膨らみになってしまうのだ。
そこで、自らの意いを解き放し、彼の方を想った。すると
昨日は「○○まる」
今日は「○○まる」
明日は「○○まる」
明後日は「○○まる」と、色々な膨らみが生まれた。
全てが焼きあがるが、一碗に決め切れず、
「進まなくなったまる」、と「それぞれのまる」の候補を、伏せて委ねた。
当然「それぞれのまる」の中から、選ばれると思っていた。
ところが、結果は何故か前者であった。
「にんまる」と命名した。
ちょっと悲しいが、まさに、にんまりである。
しかし、それは茶碗ではなく、もう、水下(建水)となっていた。
そして、・・・・・へ
4、笑苦火(えくぼ)
「にんまる」に、にんまり北叟笑んだ。
その、報いなのか、焼成に悩み苦しんだ。
火の神様が釉薬に与えた、ほんの可愛い「えくぼ」である
そういえば
私にも、与えてくれていた。
2011年 菊池寛実記念 智美術館 <個展>『川瀬忍の青磁 天青から 静かなる青へ』 に寄せて |